追悼録 ♯3 ~さみしいと言った人~

結局亡くなられるまでに、片手で数えられるくらいしか
会うことができなかった。

どんな人生を送ってきたんだろう。何を望んでいたんだろう。
何が好きで何が嫌いだったんだろう。
いまでもわからないことだらけだ。

初めて会ったのは、入院されている病院の相談室。ある日救急搬送され、そのままどんどん認知症が進んでしまった。家族もなく、唯一関わってくれたご兄弟も高齢で、入院費の支払いもできず転院先を見つけられず、病院のソーシャルワーカーさんも、地域包括支援センターの方も頭を抱えていたところ、私が関わらせていただくことになった。

なにかを必死に訴えかける目。でも会話はどうにも脈絡を持たなかった。
裁判所に後見開始申し立てを行うことになった。

コロナ禍で入院中は面会禁止。その後にゆっくり話せたのは、病院を退院して施設に移動するときだった。

「今日は調子がいい」とおっしゃって少し会話ができた。
「さみしい」「この先どうなるのか」と切実に訴えられる。
「今日は病院を退院して施設に引っ越しです。これからはご兄弟も私も会いに行けるし、病院よりもゆっくりと生活ができます。何も心配ないですよ。」そう伝えるとすこしほっとした顔をされた。

これが唯一の会話らしい会話。
次に施設を訪ねてお話してもやはり脈絡はなかったり、体調が悪かったり。施設に入居されてから旅立たれるまでは一か月もなかった。

一人見送るたびに、もっと他にできることはなかったか考える。
あのとき少しでもほっとしてくださったのであれば、それが私にとっての救い。
でも、本当はもっと前に出会いたかったな。

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にしざわゆみ司法書士事務所
司法書士 西沢優美
☎ 0466-29-1155
✉ 2438@nishizawayumi-shiho.com

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おもいやりが循環する社会へ

 

先日、承継寄付診断士講座を受講してきました。
承継寄付診断士とは、簡単に言うと「遺贈寄付の専門家」です。

遺贈寄付とは、遺言を書いておいて、相続する財産の中から寄付をして自分の思う社会貢献をすること。財産の一部、少額からでも自由に行うことができます。

特に、おひとりの方、子供がいない方は、今まで築いてきた財産を将来どのように残すのがいいのか、その選択肢の一つに「寄付」を検討される方は意外と多いのです。

ご本人の意思を、法律的にも税金面でも問題なく、確実に実現でするためには専門知識が必要だと思って、この講座を受けてみることにしました。

講座を受けてみて一番可能性を感じたのは、遺贈寄付が社会とつながるきっかけになるんじゃないか?ということです。ご自身の生きてきた軌跡である財産で将来誰かが救われ、それを実感することで、幸せを感じる方がいるんじゃないかなと思いました。

「自分の家のことで将来親戚に迷惑をかけてはいけないから
行き先を決めておかなきゃと思って・・・」

「特に残したい人がいないから寄付でもしようかな。
寄付先はどこでもいいよ。」

そんな思いで相談に来てくださる方が、自分で応援したい団体を選んで、どんなふうに使われるかを知って、感謝をされることで、少しでも前向きな気持ちで遺言を書けるんじゃないかなと思いました。

そして、それが実際に社会をよくしていくために頑張っている団体を救うことになったら、こんなに素晴らしいことはないんじゃないかなと思いました。

どのように寄付先を決めるか?
法律的・税務的に問題がないようにするにはどうしたらいいのか?

なんとなく寄付をしたいな~と思っても具体的にどうしたらいいかわからないときに、専門的な知識をもってアドバイスができるのが承継寄付診断士。

しっかりみなさんをアドバイスできるように、勉強をもう少し続けてみようと思います!

おもいやりが循環する社会へ🌈

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事務所移転のお知らせ

 

このたび、事務所を下記住所に移転いたしました。

<新事務所>
〒251-0054 藤沢市朝日町15番地の2
電話番号 0466-29-1155
※電話番号は変わりません。

ゆっくりとお話しいただける、居心地のよい場所にしていければと思っております。
より一層皆様のお役に立てるよう、精進してまいりますので、
今後ともどうぞよろしくお願いします。

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お引越し~40年住んだ家を引き払うということ~

「家に帰りたい。」

一年前、彼はいつもそう言っていた。急に体調がわるくなって、大事に手入れをしながら暮らしてきた家をそのままに、それこそ、着のみ着のままで離れることになってしまったのだから無理もない。

自宅での一人暮らしは無理だと周囲に判断され、彼自身の納得のないままにあれよあれよと介護施設で生活することになった。わたしが初めて彼に出会って財産管理や身の回りのいろいろなことをお手伝いするようになったのは、そんな頃である。

「家に帰りたい。」

だけど、実際家に帰るとなると様々な困難が伴うこともわかっていた。
一人暮らしで転倒してしまったら?けがをして取り返しのつかないことになったら?その不安は、彼自身も私も感じていた。

でもだからといって、その不安をなくすために、生きる希望を捨てられるだろうか?

電動車いすで自由に出かけたい。
好きなフルーツを好きな時に食べたい。
お金の出し入れをきちんと確認したい。
趣味のモノづくりを通して生活を豊かにしたい。

どれも人として当たり前の希望だ。安全か?自由か?そんな二者択一は酷すぎると思った。

「どこでどんな風に暮らすのが一番いいだろうね。自由と安全のバランス、ちょうどいいのはどこだろう?」
いろんな選択肢を吟味して、対話を重ねて一年とちょっと。いまは新しい場所で、安心して満足できる暮らしができるようになった。電動車いすで買い物に出かけ、好きな食べ物を買ってくる。不自由な身体でもすぐに手が届くように、あらゆるものを車いすにぶら下げて。ここでは、常に気にかけあえる人たちがそばにいて、もしもの時も安心だ。

ここまできて、彼はついに、これまで空き家になっていたもともとの自宅を引き払い、家財を処分する決心をした。時間はかかったけれど、この時間が必要だったんだろうなとも思う。

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すっかりきれいになった家をみて、ほっとしたような、さみしいような、次のステージに向かう希望のような、何とも言えない気持ちになった。

40年住んだ家。玄人はだしのDIYを施した部屋。手作りの机や棚。愛着を持って集めた工具。一つ一つに思い出があって思い入れがある。どんな気持ちで決心されたんだろう。次の暮らしに向けて、相当な覚悟だったはずだ。その覚悟に応えて、私はこれからも彼の人生に寄り添っていく。

「西沢さんはボクにとって親みたいなもんだ」と言ってくださっていたらしい。私が親??!驚いたけれど、確かに口うるさいことも言っちゃうもんな(笑)家族のような存在になれたことが最高にうれしい。そして改めて身が引き締まる思いだ。

いっしょにいろいろな選択肢を検討してくださった皆さん。日々生活をサポートをしてくださる皆さん。暑い中引っ越しを手伝って下さった皆さん。大量の家財を片づけてくださった皆さん。たくさんの支えがあって今がある。感謝の気持ちでいっぱいだ。

今、彼のまわりには、役割を超えて人として関わる人たちがたくさんいる。私もその一人。新しい日々も楽しみだ。

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追悼録~死んだらゼロになりたい~

初めてお会いしたときには、彼はすでに余命2か月を宣告されており、ベッドから起き上がれない状態だった。

「死ぬまで自宅で一人暮らしを続けたい」というご本人の強い意志のもと、ケアマネージャーさんをはじめ、在宅医の先生、看護師さん、薬剤師さん、ヘルパーさん、訪問入浴のスタッフさんなど、関わる皆さんがそれぞれの役割で彼の生活を支えていた。

そのとき一番困っていたのは、お金の管理や支払いをする人がいないことと、亡くなった後のことをどうしたらいいのかわからないこと。

そこで私がその役割を担わせていただくことになったのだ。「財産管理委任契約」「死後事務委任契約」という契約を結び、財産の管理と亡くなられた後の葬儀や埋葬、さまざまな手続きをお任せいただくことになった。

印象的だったのは、どんなふうに葬ってほしいか?ということを聞いた際のことだ。彼は、まっすぐに私を見て「私は死んだらゼロにしてほしいんだ」と言った。

「私が死んだら何も残さずをゼロにしてほしい。すべてなくしてほしい。」

自分の死をまっすぐ見つめてそんな風に言えるなんて、なんて強い人なんだろうと驚いたのをよく覚えている。その意思をかなえるために具体的にはどうしたらいいのか?私たちはたくさん会話を重ねていった。

その後、彼は医師の宣告した余命より半年以上ながく命をつないでくれた。
薬の影響でだんだんと眠る時間が長くなり、最期は看護師さんの到着を待つように逝った。穏やかに眠るように。

彼と関わりだしたころ、ケアマネージャーさんが「お金や死後のことに不安がなくなったから、体調がよくなったみたいです。」と言ってくださった。それが本当ならどんなにうれしいことだろう。そのときは、そう素直に喜んでいた。

けれど、いまおもえば、私は彼の強さに甘えていたのかもしれないとも思う。強い意思は決してぶれない、その意思をきちんと実現できれば安心してくださると信じていた。でも、本当にそうだったのだろうか?きっと多くの時間を一人で過ごすなかで不安もあっただろう。自分のした選択に迷うこともあったかもしれない。弱い部分を見せるのを嫌がる人ではあったけれど、もう少しそばにいて、もう少し寄り添うことができなかったか?

お見送りのたびに、なにかもっとできなかったかという葛藤が生まれる。でも、それが大切なんだとも思う。

「ゼロにしてほしい」

今、私が寄る辺とできるのは、彼のまっすぐなこの言葉だけだ。その言葉を実現するために自分の職務を全うする。ゼロになってもきっと見ていてくれると信じて。

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